055-278-2016
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三輪院長ブログ

パーキンソン病の治療薬: 各論⑥ アデノシンA2A受容体拮抗薬(ノウリアストⓇ)

今回お話しさせていただくのはノウリアストというお薬です。これまで紹介してきた治療薬は殆どが脳内のドーパミン不足を補うための働きをもつ薬剤でした。つまり下記の①~③のグループに入ります。

今回のノウリアストは④のグループになります。少し名前が長く小難しいですが、この薬は神経細胞の持つアデノシンA2A受容体というところに作用します。拮抗薬というのは作用を妨げて邪魔をする効果を持つ薬のことです。つまり ノウリアストはアデノシンがこの受容体に結合するのを阻害して効果を発揮します。

 

  • ドーパミンを補充する
  • ドーパミンと同じ効果のある物質を補充する
  • ドーパミンを長持ちさせるような作用の薬を使用する
  • ドーパミンが作用する神経と、相反する働きを行う神経の作用を弱らせる

 

アデノシンがアデノシンA2A受容体に結合すると、GABA(ギャバ)という体の動きを抑制する物質が分泌され、これが過剰になると運動機能の低下を引き起こします。勿論身体を休めることは時には必要ですが、パーキンソン病の患者さんの脳内では、ドーパミンとアデノシンのバランスが大きくアデノシンの方に偏り、過剰にブレーキが働いている状態だと考えられています。

ノウリアストを使用すると、このアデノシンが細胞の受容体に結合出来なくなるため、ブレーキの効き過ぎを解除することが出来る訳です。この作用によってパーキンソン病の運動症状を改善させると考えられています。

期待できる効果としては、パーキンソン病の運動症状の改善と、症状の日内変動であるウェアリングオフの軽減です。一方で、頻度は多くありませんが他の治療薬も沢山使用している患者さんでは、ノウリアストの追加によってジスキネジアを誘発することもあり得ます。

 

話しが少し逸れますが、コーヒーなどに含まれるカフェインは適度な摂取量であれば中枢神経興奮作用によって眠気や疲労感を緩和したり、頭痛を軽減したりといった効果が期待できる物質です。実はこのカフェインもアデノシンA2A受容体に作用し、アデノシンが受容体に結合するのを阻害し、それによって効果をもたらします。同様にアデノシンA2A受容体に拮抗的に作用するノウリアストにも同じ作用が期待でき、パーキンソン病の治療薬の殆どが副作用として眠気が出てしまう可能性を持つ一方で、ノウリアストはパーキンソン病の治療を行いつつ、日中の眠気を防ぐ効果も期待できるというユニークな特徴を持っているのです。

 

甲斐リハビリテーションクリニック 院長 三輪道然

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