055-278-2016
Facebook
Instagram
アクセス

Dr.コラム

パーキンソン病の治療薬:各論②

以前、治療薬総論で、脳内のドーパミンを回復させる方法として、いくつかの手段を挙げました。それは、そのまま治療薬の特徴を表します。前回説明したL-dopaは①のドーパミンを補充する、に当たります。

  • ドーパミンを補充する
  • ドーパミンと同じ効果のある物質を補充する
  • ドーパミンを長持ちさせるような作用の薬を使用する
  • ドーパミンが作用する神経と、相反する働きを行う神経の作用を弱らせる

今回説明するのは②にあたる薬剤です。

ドパミンアゴニスト、といってドーパミンとは違う物質ですが、ドーパミンに似た性質を持つものです。脳内でドーパミンが神経に作用するとき、受け取り手である神経には受容体というキャッチャーの様な役割をする部分があります。この受容体にドーパミンと同じように接続して作用を発揮する物質がドパミンアゴニストです。ドパミンアゴニストは受容体に作用出来るという点でドーパミンと共通点を持ちますが、ドーパミンと違って血液脳関門を通過することが出来ます。つまり分解酵素の阻害薬を必要としません。また、ドーパミンよりも長い時間体内に留まることが出来るので、作用時間が長くなり効果が安定しやすいという特徴があります。以前は1日3回の内服薬が主流でしたが、改良が重ねられ1日1回の内服でも症状改善効果が持続するようになりました。

少し話が逸れますが、L-dopa製剤はパーキンソン病の症状を改善する作用が非常に優れた治療薬ですが、作用時間が90~120分と短く、治療期間が3~5年経過すると1日3回内服しても効果の切れ間が見られる様になります。治療効果に波が現れるということは、症状も良くなったり悪くなったりと不安定になってしまいます。このことをウェアリングオフ(wearing-off)と言って、パーキンソン病の治療において、気をつけなければいけない事柄の1つで、運動合併症と呼ばれます。作用時間の長いドパミンアゴニストはこのウェアリングオフへの対策としても有用な治療薬になります。運動合併症に関してはまた別項で詳しくお話ししたいと思います。

ドパミンアゴニストが登場した当時は、麦角系というグループのアゴニストが活躍しましたが、使用量が増えたり使用期間が長くなるにつれ、心臓の弁膜症を発症する危険性が増加することが分かり、徐々に使用頻度が減っています。現在は非麦角系というグループのアゴニストが活躍するようになりました。

非麦角系のドパミンアゴニストは、心臓への悪影響の心配はありませんが、人によっては眠気が出やすかったり、突発的睡眠といって、本人が眠気を感じていないのに突然寝入ってしまうという副作用が稀に見られることがあります。ですのでこの薬の使用中は、自動車運転や高所での作業など、事故につながる危険性があることは禁止されています。

甲斐リハビリテーションクリニック 院長 三輪道然

関連記事