- パーキンソン病の運動症状:振戦
前々回のコラムで、パーキンソン病は、手足が振るえる代表的な病気、と少し触れました。手や足、患者さんによっては頚・頭部に振るえが出る事もありますが、振るえの症状のことを医学的用語では「振戦」と呼びます。
パーキンソン病の患者さんは7割の人が振戦で発症すると言われています。発症時に限らず、病気の経過中に振戦が見られる人はもう少し多くなりますが、逆に言えば、代表的な症状である振戦が見られない患者さんも珍しくはありません。時々、「先生、私は振るえがないからパーキンソン病ではないんじゃないですか?」とおっしゃる患者さんがいらっしゃいますが、振戦は必ずしもすべての患者さんに認められるわけではありません。振戦に限らず、患者さんによって見られる症状にはかなり個人差があるというのもパーキンソン病の特徴であり、私達医師が診断する上で、厄介なところでもあります。
さて、振戦はいくつか種類があります。リラックスして力を抜いているときに見られる安静時振戦、ある姿勢を維持しているときに見られる姿勢時振戦、一連の動作を行う過程で見られる企図振戦に分類されます。
- 安静時振戦:自宅でソファに座ってテレビを観ている時や、歩いている時に自然に振っている腕の手首や指に見られる振るえです。
- 姿勢時振戦:腕を少し持ち上げた状態で止めていると見られる振るえです。食事の際に茶碗を持っている腕や、ビールを注いでもらう貰う時にグラスを持っている腕に見られます。
- 動作時振戦:ペンで字を書いている時や、食事の際に箸やスプーンで食べ物を口に運ぶ時など、腕や足を動かす時に見られる振るえです。
パーキンソン病の患者さんに見られる振戦は安静時振戦が多いですが、やはりそれも個人差が多く、姿勢時や動作時の振戦のみであったり、むしろ動作時の方が目立つ患者さんもいらっしゃいますので、一つの症状があるから、あるいは無いから、と言う理由でパーキンソン病の有無を断定することはできません。
甲斐リハビリテーションクリニック 院長 三輪道然