2024年4月より常勤医師として勤務しています磯部です。
糖尿病および内分泌疾患の専門医としてそれらの分野について情報発信していきたいと思います。特に糖尿病においては、患者さんと医療者側の認識の違いを普段の診療でたびたび感じていますので、糖尿病がある方もそうでない方もぜひ一読いただけましたら幸いです。
第1回のテーマは「なぜ糖尿病を治療するのか」についてです。
健診や手術の前の検査などで糖尿病が判明して受診にいらっしゃる方は「自覚症状が特にないから気付かなかった」と驚くことが多いです。糖尿病=血糖値が高いというのはみなさんがお持ちのイメージだと思いますが、「じゃあ血糖値が高いと何がいけないの?血糖値が多少高くても今の所全然具合悪くないよ。」と糖尿病になったばかりの初期の方は思うかもしれません。
血糖値が多少高くても最初の内は症状がないことがほとんどというのは正しいです。ではなぜ糖尿病をしっかり治療しなければいけないのか。それは血糖値が高い状態が長期にわたり続いた時に、全身の血管が傷ついてしまって、それらの血管によって栄養されている臓器=脳、眼、心臓、腎臓、神経、手足がダメージを受けるからです。そういった臓器障害が起こると、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、血液透析、視力低下、手足の強いしびれなどを生じ、生活の質が著しく低下し、健康寿命が短くなってしまうことが問題です。
まとめると
糖尿病=血管がゆっくり痛む病気
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様々な合併症を引き起こし、生活の質・健康寿命が低下する
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しっかり治療することによって合併症の発症を防ぎ糖尿病がない方と変わらない寿命・QOLを保つ
というのが糖尿病治療最大の目標です。
血糖値を下げてHbA1cを低くすればいいという単純な理由ではなく、なぜ糖尿病を治療するのかをしっかり理解した上でご自身の生活・生き方と向き合っていただければ幸いです。
甲斐リハビリテーションクリニック 磯部さやか