Vol.3 「高度医療と総合医療の両輪で支える現代の医療」
小林 地域の一医家である久晴会グループ 医療法人 久晴会 甲斐リハビリテーションクリニックでは、より詳しい検査や入院治療が必要な患者様には、山梨大学病院などの基幹病院をご紹介させていただいています。一方、基幹病院での治療が終わった患者さまには、在宅生活を継続しながらの治療を我々にご紹介いただくといった連携させていただいています。
大学院時代に排尿障害についてお話しをさせていただいていたときに、武田先生から「小林君はこれからどのような仕事を目指してゆくのか」と尋ねられた事が有りました。そのとき私は「(排尿)障害の存在そのものを問題としない社会を創る。そんな仕事をしたいと考えています」とお答えしたのですが、武田先生は即座に「僕はその排尿障害がなくなる社会をつくるよ」とおっしゃいました。もともと専門が違うので当然なのですけれど、やはり一つも二つも上の視点から全体を俯瞰して観られていて、経営者としての視点やお言葉そして行動(Vol.1)も総てそういったところから来るのだろうなと思ったものです。
武田 2021年3月に病院長を退職したのですが、それまではずっと大学にいて先端医療や研究に主眼を置いており、新しい薬や新しい手術を開発するということをずっとやってきたのです。ただし、それだけですべての疾患が治ることはありませんし、どうしても現医療では完治が難しい場合もあります。高齢化すれば当然身体機能もダウンしますし、それをいかにいい方向にもっていくかというのは先端医療では対応できず、やはり通所や在宅で対応していかなければなりません。
現在、日本には医療費や福祉予算の問題があり、国としては急性期病院から在宅に移せば医療費は抑えられると考えていたのですが、それが違っており、病院への入院と在宅療養の中間的な方法として、急性期病院にしばらく入院してリハビリ行った上で、在宅に移行する流れの構築に取り組んでいます。これからは在宅医療や在宅看護・介護を充実させるというほうが理想的なのでしょうけれど、それはなかなか大変ですよね。
小林 現状に於いて在宅医療、在宅看護・介護にはさまざまな専門職が、法人や職域の枠を超えて連携する事が求められています。更に在宅生活を維持する上で重要と考えられるのは、家族間のコミュニケーションと地域のコミュニティだと感じています。様々な要因で脆弱化した家族間の関係性や地域のつながり等にまで踏み込まなければ、様々な病気や障がいと共に地域社会で共存しようとされる方々を支える事は出来ないのではないかと思います。しかし地域のコミュニティーを育むのは最終的には地域にお住いの方々の自助と共助、そして公助も加わった包括的支援の在り方が今問われていると思います。時としてそのコミュニティーづくりから育成と運用までも、さまざまな法人や医療・介護の専門職に丸投げになってしまっている事例に接するたび、地域行政にも大きな課題があるのかなと感じています。
(Vol.4に続く)