糖尿病専門医の磯部です。
第9回のテーマは「GLP-1受容体作動薬」です。
現在糖尿病の薬物治療で用いられる注射薬はおもにこの2種類が挙げられます。
- インスリン製剤
- GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬
前回は①インスリン製剤について紹介しましたので、今回は②のGLP-1受容体作動薬について紹介します。
まずGLP-1やGIPとはなにかを簡単に説明しましょう。
GLP-1は小腸の細胞から分泌される消化管ホルモンの1種です。インスリンの分泌を促すため、血糖値の上昇を抑制する効果があります。さらにGLP-1は脳の視床下部にある摂食中枢に作用することや、胃の動きを抑えることで、食欲を抑制し、食事量を減らす効果があります。
GIPも小腸から分泌される消化管ホルモンで、GLP-1と似たような効果ですが、さらに食欲抑制や脂肪燃焼、代謝亢進などの役割があるレプチンやグルカゴンの分泌も促すことが分かっています。
どちらも元々消化管で産生されるホルモンなので、副作用としては便秘、下痢、悪心などがありますが、使用を続ける内にそういった症状が緩和するケースが多いです。また重症低血糖などの副作用はありません。
★以上をまとめるとGLP-1受容体作動薬は
・消化管ホルモンに由来する
・食欲抑制効果や、インスリンやその他のホルモンの分泌を促す
→過食の是正、血糖値改善、体重減少などの効果が期待できる
・副作用として腹部症状が出現することがある(10%前後)
・心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントを減少する報告がある
・GLP-1受容体作動薬のみでは低血糖の心配はほとんどありません。
注射製剤ときくと、「難しくて自分には無理。痛そうだから嫌。最後の手段でしょ。」など様々な誤解がありますが、実際はそんなことありません。
製品によっては針が内蔵されているため、針を自分でつけたり外したりする必要がなく、スタンプのようにポンとお腹に当ててボタンを押すだけで注射できます。また針もすごく細いので痛みを感じることはほとんどありません。
インスリン注射と同様にGLP-1受容体作動薬も決して最終手段ではなく、合併症を防ぐ観点からなるべく早期から使用したほうがいいケースも多々あります。主治医から提案された際によく御相談し、一度お試しいただくことをお勧めします。きっと印象がガラリと変わることだと思います。