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Dr.コラム

パーキンソン病の治療薬:各論①L-dopa製剤

今回は前回からの続きで、パーキンソン病の治療薬について、各種類ごとに説明していきたいと思います。

L-dopaというのは、パーキンソン病の症状改善に必要なドーパミンの前駆体です。前駆体というのは、体内に取り込まれた後に、体の中の酵素の働きで物質の形が変化し、作用をもたらす物質に変わるものを言います。つまりL-dopaは体内に取り込まれると、体の中でドーパミンへと変化する物質なのです。

ドーパミンという物質は、内服であっても注射であっても、体の中に取り込まれても、実は脳には届きません。つまり幾らお薬としてドーパミンを患者さんに投与しても、心臓など他の臓器には作用しますが、脳には作用を及ぼさないのです。

(ドーパミンは強心剤や昇圧剤として使用されます)

脳には血液脳関門という器官があり、関所のような働きをしています。脳に影響を及ぼす物質が簡単に脳に入らないように、脳内に移動する物質を制限しているのです。ドーパミンはここでブロックされてしまい、脳内に移行できないのです。一方で、前駆体であるL-dopaはこの血液脳関門を通過することができます。

ですので、治療薬としてドーパミンを補充するのではなく、脳内にきちんと届くL-dopaを投与するのです。L-dopaはそのままではパーキンソン病の運動症状を改善する作用はありませんが、脳内でドーパ脱炭酸酵素という酵素の働きによってドーパミンに変わり、神経の働きを回復させ、症状を改善させるのです。

ただ、もう一つ問題があります。このドーパ脱炭酸酵素というのは、脳内だけではなく全身に存在しています。もしL-dopaが脳内にたどり着く前に酵素の働きによってドーパミンに変えられてしまうと、折角のL-dopaが脳には届かずに、症状を改善させることが出来ません。

そこで、このドーパ脱炭酸酵素の働きを阻害する薬を使用します。この阻害剤が現在利用されているL-dopa薬剤の錠剤の中に配合されているので、皆さんが薬を内服した後、L-dopaが脳に到達するまでは酵素の働きを抑えて、L-dopaの形のまま脳内に届けることが出来るのです。無事、L-dopaが脳内に到達すると、阻害剤は役割を終えます。脳内でL-dopaはドーパミンへと変化して神経に作用し、パーキンソン病の症状を改善する作用を発揮することになるのです。

甲斐リハビリテーションクリニック 院長 三輪道然

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